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LIFE CYCLING.

Interviews

File No.007
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Interview:
Tadatomo Oshima
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Photo:
Masahiro Sanbe


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滝沢 時雄さん 滝沢 緑さん 『やさしい光と緑が香る、バイヤーのお宅』
Tokio Takizawa, Midori Takizawa
The Conran Shop Buyer, Antique Shop Manager, Miyamae-ku, Kanagawa
2012.6.15

春から夏の間の清々しい風が流れる日曜日の午前中、田園都市線沿線の閑静な住宅街に建つマンションに住む、滝沢さんご夫婦のお宅に伺った。築40年にもなるというこの建物は、内井 昭蔵氏が設計したマニアには有名なヴィンテージマンション。窓枠のサイズからベランダの形状、物干し竿を引っ掛けるフレームまで、随所にこだわりと歴史を感じさせる。さらにマンションを囲むように大きな庭があり、葉が揺れる音や木々から洩れる日差しが敷地全体に落ち着いた雰囲気を漂わせている。滝沢さんは、最近リノベーションを完成させ、1ヶ月前に引越しをしたばかり。家具や小物も少なくすっきりと暮らしている印象だが、ヨーロッパのアンティークやミッドセンチュリーの家具を組み合わせることで、古いものが持つ温もりや優しさを感じる空間に仕上げている。

 

 

  

  

 

 

―まずは、滝沢さんご夫婦の現在のお仕事からお伺いできればと思います。
 

滝沢 時雄さん)現在、ザ・コンランショップの家具、雑貨のバイイングを担当しています。ただ、イギリス本国にグローバルのバイイング担当がいるので、日本国内での調達ルートを確保したり、国内マーケットに特化した一部のバイイングを主に担当しています。


―コンランショップで働かれる前にも前職でバイイングの経験をされていたのですか?
 

時雄さん)いえ、コンランショップで働く前は美容師をしていました。コンランショップは、今年で16年目ですかね。


―そうだったんですね。意外な過去(笑)。でも、どうしてインテリア業界に転職をしようと思ったのですか?
 

時雄さん)美容師をしていた時に、お客さんが装丁をやっている「SANTA FE STYLE」という洋書を見せてもらったんです。それを見て感化されて(笑)。その本に出てくるインテリアが好きだなぁと思っている時に、たまたまCasa BRUTUSの特集でコンランショップが上陸するという記事を読んで。そして、そのまま新宿のパークタワーにあるコンランショップに行き、度肝を抜かれて。絶対にここで働きたいと思って、美容師を辞めました(笑)。ただ、実際に入社できたのはオープンから2年後でしたが・・・。

最初はアルバイトだったので、給料が一気に半分になってしまって大変でした。当時持っていたバイク1台、車2台を全部売り払って(笑)。でもやっぱりこの仕事が好きだからここまで続けてこれたのかなと思います。

 


 

 

 

 

 

―16年前だと、きちんとコンセプトを持って家具や雑貨を販売しているインテリアショップって少なかったですよね。私もちょうど同時期ぐらいに就職活動をしていたのですが、本当に働きたいと思うところが少なくて。
 

時雄さん)そうですよね。ライフスタイルを全体的に提案できるお店は当時、イデーさんかコンランショップぐらいしかなかった。うちはモノとかスタイルに特化する一方で、イデーさんは当時から(ライフスタイルを文化として)幅広く提案していましたよね。

―インテリアショップにカフェが併設していることもあまり無かったですよね。イデーは食も含めたライフスタイルを昔から提案していたと思います。ところで、最近新しいコンセプトで渋谷ヒカリエにお店をオープンされましたが、コンランショップは今どのような流れで変化しているのですか?
 

時雄さん)渋谷ヒカリエの新しいお店は、ザ・コンランショップの世界観のなかでも「食」を中心にキッチン、ダイニング空間で創造するライフスタイルにコンセプトを置いたショップです。料理をつくる、居心地の良い空間をつくる、家族や友人と会話を楽しむといった食にまつわる空間でうまれる楽しみを提案しています。これまでになかったコンセプトショップですし、新しいチャレンジです。
今後のことで言えば、入社した時は、今まで日本に無かったモノやカルチャーがいろいろと入ってきていて、目から鱗が落ちるような出来事が沢山あったけれど、今は情報も溢れているし、そういった海外の情報に対し、驚きや新鮮味も薄れているじゃないですか。これだけの情報化社会になった今、差別化を図りながらいかにザ・コンランショップらしさを貫いていくかというのが課題だと思っていますね。


 

  

 

 

 

 

―ブランドの独自性ですよね。それはイデーも同じ課題があると思っています。昔と同じ事をやるのでなく、今の時代に合ったスタイルで、「らしさ」を表現して提案していく。私の課題でもあります(笑)。同業種の方もこのインタビューを読まれるかもしれないので、業界の話はこのぐらいにしておきましょう(笑)。それでは緑さんについてお伺いできればと思います。
 

滝沢 緑さん)三軒茶屋で「klala」という小さなお店をやっていて、週に2日ミナ・ペルホネンという洋服屋さんで働いています。前職は、私もコンランショップで働いていたんですけれど、モノを選ぶ基準が直感で、可愛いか可愛くないかで。男の人って、デザイナーの名前とかに詳しいじゃないですか。だから「klala」で扱っている商品も最初は全然わからなかったですし、詳しくないまま店長になってしまいました(笑)。


―女の人って、直感ですよね(笑)。で、男の人はデザイナーだったり、背景とかストーリーでモノを選ぶ傾向があるのかな。「klala」はウェブからスタートしたそうですが、いつから始められたのですか?
 

時雄さん)2005年です。いずれ自分のお店を開きたいと思っていましたが、当時はお金も無かったので。旅先で買った北欧のアンティーク食器やフランスの絵本など、個人的にいろいろ集めていたものをテストマーケティングみたいな感じで、ネットショップで試してみたのが始まりです。自分のセレクトしたものが受け入れられるのか知りたくて。

 

 

 

 

 

 

 

―リアルショップをオープンさせたということはテストマーケティングが成功したということですよね(笑)?
 

時雄さん)まあ(笑)。ただ、リアルショップもあそこでやろうと決めていた訳ではなくて、たまたま良い物件があって、出せることになったという感じで。東京R不動産に出ていた物件だったのですが、応募が沢山あったらしく、大家さんと面接をして気に入ってもらえました。
緑さん)プレゼン資料を持ってきてくださいって言われていたのに、どこかに置き忘れて。仕方なく手ぶらで行ったらそのルーズさが逆に良かったらしくて(笑)。


―「klala」さんの物件、本当に良いですよね。建物全体の空気感もそうだし、入り口に植えてある大きな木がお店にすごく馴染んでいて。リアルショップはいつ頃始められたのですか?
 

時雄さん)2010年の1月ですね。ちなみに内装は全く手を入れていません。什器は、自宅からアンティークの家具を持ってきました。お店は自分の好きなものだけ、売りたいと思ったものだけを売ろうと。ネットショップをやっていたころは、「北欧」と「フランス」とはっきりしていたのですが、今は国では分けず、古いものと新しいものをうまく生活の中に取り入れるという提案をしたいと思っています。一見何の脈略もなく並んでいるようですけど、そういうテーマで揃えていますね。最近は食器よりもガラクタみたいなものを買って来ることが多いですね。向こうの暮らしに根付いた感じのするものに惹かれますね。


―いつ伺っても欲しいものばかりなのですが、個人的には海外の雑誌のセレクションがいつも良いなと思っていて、「BROOKLYN DIARY」も「KINFOLK」も滝沢さんのお店で知りましたよ。お店では、定期的にマーケットもやられていますよね?
 

時雄さん)マーケット「Sunday Market」は、もともと大家さんが自分で料理をお仕事としていた方で、そういうイベントをご自身でもやりたいという夢があり、僕らが入居する時に「やりませんか?」と声をかけてもらったのが始まりです。自分たちもそういうイベントには興味があったので、その後も定期的に開くようになりました。現在は2ヶ月に1回程度開催していて、おかげさまで14回目です。

 

 

 

 

 

 

 

―残念ながらマーケットはまだ伺えていないのですが、地元の人との交流や関係を大切にする感じって、ブルックリンっぽいですよね(笑)。それではそろそろお宅の事を伺いたいと思います。まずはこの物件の決めた理由を教えてください。
 

時雄さん)もともと会社の同僚がこのマンションに住んでいて、遊びに行ったときに間取りと雰囲気がすごく良いなと思って。それから空き物件があると知り、内見して即決しました。特徴的なのが、収納が全部外に出ていて、居室スペースが広く使えるところ。ここは建築家の内井昭蔵さんがデザインしていて、ベランダの物干とか、ディテールがいろいろ面白いなと思って。あとは中庭がすごく気に入っています。


―マンションまで歩いてきたのですが、すぐにこのマンションに住んでいるんだろうなとわかりました(笑)。それぐらい素敵な雰囲気が漂ってました。この場所に歳月を重ねて馴染んでいて、中庭の緑も故意に作られた感じがなくて、自然に溶け込んでいますよね。あと、光の入りぐあいも良いですよね。
 

時雄さん) 基本縦長の物件は、縦部の南側に開口があるのが一般的ですが、この物件は贅沢に横部の広い面に窓があって。前の家は日当たりのよくない物件だったので、光の入り方というのがポイントでした。寝室に内窓を付けたのも空間に連続性を持たせたかったという狙いがありました。

 

 

 

 

 

 


―窓周りもカーテンやブラインドではなく、シルエットシェードを付けているのは、光の入り具合を考えての事ですよね。リノベーションのポイントとかあったりします?
 

時雄さん)施主参加型の業者さんをあえて選びました。自分で設計して、パーツも全部自分で揃えて、現場の進捗をみながら自分で決めていきたくて。実際は渋谷の新店オープンで忙しくなってしまい、95%はお任せしてしまいました(笑)。まず、床にはこだわりましたね。オークで幅広の床材を探して。節とか割れとか全部ひっくるめて自然なものが良い。コンラン育ちなので自然とそうなってしまうのですが(笑)。本当は床張りを自分でやりたかったのですが、時間が無くて知らない間に終わってました(笑)。でも、床のオイルは自分で塗りましたし、壁も業者さんと一緒に作れてなかなか楽しかったです。


―このオーク材の床、良い味が出そうですよね。あと、リビングとベッドルームの扉も雰囲気ありますが、アンティークですよね?
 

時雄さん)はい、ベッドルームの扉は1920年代のイギリスのアンティークで、リビングはフランスのものです。ずっと探していたのですが、なかなか良いものがみつからなくて。やっと気に入ったものが見つかってギリギリで無理矢理これを(イギリス製の扉を指して)。おかげで、ベッドルームの内窓と扉の高さが合ってないんです(笑)。


―緑さんのこだわったポイントは?
 

緑さん)収納ですね。前の家は収納が少なくて、物がいつも出ているような状態だったんです。仕事も物が溢れている場所にいるので、家はホテルみたいに何もない状態にしたくて。特にこだわりということでは無いのですが、収納の多さはリクエストしました。それ以外はお好きにどうぞって(笑)。

 

 

 

 

 

 


―確かにリビングやベッドルームにたっぷりと収納をとってますよね。キッチンもまたステンレスと木を合わせてすっきりと使いやすい感じがするのですが、キッチンにもこだわりのポイントがありそう?
 

緑さん)開口部が広く、光がふんだんに差し込むところです。今までは、家での時間もすくなくてあまり料理をしようという気にならなかったのですが、環境も変わって生活も変わりつつあるので、また料理をしたいと思っています。


―そうですよね。場所を変えるとライフスタイルも変わるし。家にいる時間を大切に使おうと思いますよね。お二人ともお忙しいと思いますが、家の中で好きな場所ってあったりします?
 

緑さん)引越してまだ1ヶ月しか住んでいないので、まだ生活感が無いですね。おろしたての靴を履いているような感じ(笑)。
 

時雄さん)僕は寝室が好きですね。前の家は朝起きたら電気を点けなくちゃいけないくらい暗かったので。今は朝5時でも明るくて起きてしまいます(笑)。
 

緑さん)私はリビング。中目黒のhikeで昔買った北欧アンティークのソファに座っていることが多いですかね。普通ですか(笑)?

 

 

 

 

 

 

 


―いえ、そんな事無いですよ。私も自宅ではソファに座ったり、寝転んだりしている時間が長いですから。では、今の暮らしに影響を受けた人やものを教えてください。
 

時雄さん)先ほどお話した本「SANTA FE STYLE」ですかね、まずは。土っぽい感じが好きなわけではないのですが、壁とドアの色のコントラストとか無意識に刷り込まれている感じがします。今も旅行に行くとドアの写真ばっかり撮ってますよ。あと、壁の飾り方なんかも、コンランのスタイルと共通しているし。そして「Mid Century Modern」。これは僕がアンティークを好きになるきっかけになった本です。


―今日お宅に伺うまでは、滝沢さんは北欧アンティークの人というイメージが強かったのですが、ダイニングにプルーベのテーブルとイームズの椅子を使っていて少しびっくりしました。
 

時雄さん)僕のベースはミッドセンチュリーです。北欧も好きですけどブームもありましたし。ルーツはあくまでこれですね。


―私たちの世代は、やはりイームズの影響は大きいですよね。私も学生時代に買って持ってますよ、この本。そして、「KINFOLK」ですね。
 

時雄さん)「KINFOLK」は、家族や友人と過ごす時間を見つめ直す、豊かな生活がテーマで、そこが良いなと。こういう空気感って出せそうでなかなか出せないですよね。ザラっとした紙質も好きです。またウェブサイトで展開しているプロモーションビデオもすごく丁寧に作られていて、おすすめです。


―この雑誌は、写真も良くて毎号楽しみにしています。少しジャンルは違うかもしれませんが、スペインの「apartamento」やドイツの「The Weekender」などの雑誌にも通じる、作り手のこだわりと愛情を感じる本ですよね。
 

時雄さん)影響を受けた人で言うなら、身近なところで「Riddle Design Bank」の塚本くんかな。かなり昔から自分で海外の蚤の市を廻って買付けをしていたりして。お店をやろうと思ったのは彼の影響が大きいですね。あとは、彼女(緑さん)が働いているミナ・ペルホネンのオーナー、皆川 明さんです。やさしいけど仕事には厳しい人だから、彼女を通してですが、仕事やモノ作りの姿勢はとても勉強になります。
 

緑さん)私は、コンランやミナで知り合った身近な人。お店をやっていると自分から何か発信しないといけないのかもしれませんが、まだまだ周りの素敵な人たちから受ける影響が大きいです。

 

 

 

 

 

 


―皆川さんは私も好きで雑誌の連載や執筆されている本をよく読んでます。アンティークの家具や雑貨にも集めてらっしゃいますよね。じゃあ、これからお部屋で手を加えたり、替えたりしようと思っている事ってありますか?
 

時雄さん)ここ(リビングの縦長部分)にハンモックを吊るしたいですね。夏を過ごすために。今までは自宅でゆっくり過ごす時間がなかったので、これからはそういう時間を増やしたいと思っています。


―確かにこの場所にハンモック吊るしたら気持ち良さそうですね。音楽聴きながらダラダラと本を読んだり、うたた寝したり(笑)。羨ましい。それでは最後に、今後について考えている事や予定でもかまいませんので何かあれば教えてください。
 

時雄さん)今までコンランショップって、業界間の交流があまり無かったので、個人的な活動として横の繋がりで何か面白いことがやれたらなと思っています。今回取材を受けたのも、イデーさんは懐が深いなって(笑)。


―ライフサイクリングを通して、インテリアやライフスタイルに興味を持ってくれる人が増えたら、インテリア業界も活性化するし、より豊かなライフスタイルを送る人が増えたら良いなと思います。イデーとザ・コンランショップのコラボレーション、難しそうだけど実現したら面白いですね。
 

時雄さん)まさにそうですね。何か企画しましょう。

 

 

 

 

 

 


和やかな雰囲気でインタビューに答えていただいた時雄さんと終始笑顔が印象的だった緑さん。この部屋に引越しをしてから生活のサイクルも変わり、自宅で過ごす時間を大切にしていきたいとお話されていました。緑さんがさりげなく出してくれたハーブウォーターがとても美味しくて、インタビュー後もコラボレーション話に花が咲きました。これからのお二人の活躍にますます期待です。

 

プロフィール

滝沢 時雄
栃木県生まれ。美容師を経て、1996年からザ・コンランショップ勤務。現在はザ・コンランショップとklalaのバイイングを担当。

滝沢 緑
東京都生まれ。ザ・コンランショップ丸の内店勤務後、2006年に株式会社ミナに入社。現在はミナ・ペルホネンに勤務しながらklalaの店主を務める。

klala
2005年にネットショップでオープン。2010年に世田谷区太子堂に実店舗がオープン。北欧やヨーロッパのビンテージ食器や雑貨のほか、独自の目線でセレクトされた国内外のアーティストの作品なども取り扱う。定期的にパンや焼き菓子などをメインにしたマーケット「Sunday Market」を主催している。

http://www.klala.net

 
写真:三部 正博さん
Photo: Masahiro Sanbe

1983年 東京都生まれ。
東京ビジュアルアーツ中退後、写真家泊昭雄氏に師事。
2006年 フリーランスとして活動開始。
www.3be.in
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